『粋な飲み方⁉』
「ご新規さん、ざる1枚お燗つきでお願いします」
蕎麦屋に入ると、こんな注文のやりとりが聞こえます。
『蕎麦前』といって、蕎麦が出てくるまでの待ち時間に、一杯飲むのです。
『蕎麦前』は江戸時代半ばにさかのぼります。
当時、蕎麦は「挽きたて、打ちたて、茹でたて」が当たり前でしたから、出てくるまでに少し時間がかかります。
そのちょっとした待ち時間に1合程度飲むのです。
酒を飲み終えたら締めに蕎麦をたぐり、長居しないで切り上げる。
深酒なんてとんでもありません。
それが”粋”とされました。
「蕎麦を待つ間に酒を飲む」ということは、料理屋の酒と違い、あくまでも酒を飲むことが目的ですから、酒好きの人が注文します。
江戸末期のある蕎麦屋の品書きには、そば16文、天ぷら32文、上酒1合40文とあります。
今の価格にすると、せいろ600円、上酒1500円ほどに相当するでしょう。
当時の蕎麦屋の酒は上酒とか御酒(ごしゅ)と呼ばれ、上等の酒が出されていました。
以上、いつもの手引書より引用させていただきました。
“粋”に振る舞うのも、なかなかお金がかかりましたねぇ。
《学びの手引書》
『日本酒の科学 水・米・麹の伝統の技』
(和田 美代子著)
- 発売日:2015年09月18日頃
- 著者/編集:和田 美代子、高橋 俊成
- レーベル:ブルーバックス
- 出版社:講談社
- 発行形態:新書
- ISBN:9784062579353
追記)「ものがたり酒店」で、多数お取扱させていだいております球磨焼酎。
その蔵元さんが点在する球磨川流域、豪雨で甚大な被害が出ています。
1日も早い復興をお祈り申し上げます。