『速醸酛』
江戸時代から続く伝統的な生酛(きもと)に対して、生酛系の山廃酛が開発された1909(明治42)年、速醸酛も誕生しました。
生酛を理解する上で役立ちますので、軽く学習しておきましょう!
速醸酛は1909(明治42)年に当時の醸造研究所(現・独立行政法人酒類総合研究所)の江田鎌治郎氏(1873〜1957年)が、生酛は酸性環境をつくり出すことが重要であると気づき、考案しました。
このとき同氏は公益性を考慮して、その特許は取得しませんでした。
さらに岸氏(乳酸添加の創案者)の乳酸添加とあわせて、それまでの「生酛仕込み」に代わる『速醸酛仕込み』として体系化しました。
名前の示すとおり「速醸酛」の造りは製造日数が、生酛に比べて製造期間が大幅に短縮できます。
大手酒造メーカーを中心に導入が進みました。
【丁稚追記】
現在、速醸酛で造られる日本酒は全生産量の約八割を占めていると思います。
丁稚がネットから引っ張り出した興味深いデータがありますのでご紹介しておきます。
「灘の仕込、1957年(昭和32年)は速醸酛が発明されて47年経つが、速醸酛の割合はまだ24%であった。」
《灘酒研究会 編:続灘酒, p.111, 灘酒研究会(1988)》
苦労の連続で、なかなか、本格導入には至らなかったと想像できますね。
また、次の対比はご記憶にある方もおられると思いますが再掲します。
原材料
生酛→米・米麹・水
速醸→米・米麹・水・乳酸菌
酒母の種類
生酛→生酛、山廃酛
速醸→速醸酛、高温糖化酛
乳酸☆
生酛→天然の乳酸菌が生成される
速醸→市販の乳酸を添加する
☆雑菌の発生抑止に必須
製造日数
生酛→20〜30日
速醸→7〜15日
仕込み温度
生酛→7℃前後
速醸→18〜20℃
以上
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『日本酒の科学 水・米・麹の伝統の技』
(和田 美代子著)
- 発売日:2015年09月18日頃
- 著者/編集:和田 美代子、高橋 俊成
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